(2008年) 平成20年元日(火)
新年のご挨拶
地方に活力を!暮らしにほほえみを!


政治家が今、取り組むべき課題

 あけましておめでとうございます。新しい年、皆様のご多幸を心からお祈り申し上げます。

 昨年は、政治の世界では思いもかけないことが次から次へと起こりました。

 まず、年金の記録問題。国民が納めている年金保険料がこれほどずさんに扱われているとは!(年金保険料がグリーンピアなどにムダ遣いされていることは、私が自民党年金制度調査会長の時に一掃しました。残っている問題は、年金保険料を年金の事務費に充当してよいか、との論点です。)

 年金は、老後の安心感のよりどころです。これでは政治に対する信頼感が失われてしまいます。この問題を解決するには、もはや抜本的に年金制度の仕組みを変えなければならないと思います。

 そして、「バンソーコー」をはった大臣。自殺をした大臣。参議院選挙での自民党の歴史的大敗がこれに続きます。敗北の根本的な原因は、しかし「バンソーコー」などではありません。

 「安心」が日本人のDNAです。年金記録問題により日本人のDNAが脅かされました。そしてなによりも、地方と都市部との格差が益々拡大していることです。たとえば、東京都民一人当りの年収は、450万円。対して香川県の一人当りの県民所得は、260万円。さらに、この所得に占める年金所得の割合は、東京では6%強、香川では13%強です。この数字だけ見ても地方で自民党が負けた理由が分かるような気がします。

 加えて、国際社会の中の日本と言う眼で見たとき、日本の存在は、徐々に、まるで糖尿病にかかったように、低下して言ってることが分かります。一人当たりGDPは、かつて世界1位であったのに、今は18位に落ち込んでいます。世界全体のGDPの中で、日本のGDPはかつて17%あったものが、今は10%を割りました。選挙の争点にはなりませんでした。日常生活の中では気が付かないことです。

 しかし、日本の将来を思い、国民の持続的な「生きがい」や「しあわせ」を思うとき、政治家は今、まさに「地方の活性化」「社会保障と生きがい」「国際社会の中の日本」の3つのテーマを解決していかねばなりません。

基本的・長期的・国際的に考え、日本の将来の夢を画こう

 しかし、これらの問題は「バンソーコー」を貼っても解決しません。現状から出発したのでは、利害関係にとらわれて、目標には到達しません。

 そうです。今必要なのは、「バックキャスティング」の手法です。先ず、将来の夢を画いて、その画いた夢を現実につないで道筋をつくろうではありませんか。現実から出発する「フォーキャスティング」の手法では、問題は解決されません。

 だからこそ、夢を画きましょう。振り返ってみると、現在の政治家は、夢を語ることが少なくなってきたのではないでしょうか。日本人全体も同じではないでしょうか。我々の若い頃には夢がありました。アメリカは夜空に輝く星のごとき存在でした。手を伸ばしても届かない。しかし、あの星を目指してがんばろうという気持ちはわいてきたのを思い起こします。

 アフリカのマラウィで一村一品運動を展開している村があります。私は、村民の皆様の前で、「今、みなさまがなさっていることは小さなことかもしれませんが、将来に大きな夢を持ち、その夢に向かって頑張っていこう。日本は、皆様のご努力に対して支援を惜しまない」と演説し、大拍手を頂いたことがあります。

 政治家にとっては、今まさに、日本の将来の姿かたちについて語り、その将来の夢に向かって第一歩を踏み出すときです。

若者よ、ふるさとへ帰ろう

 なぜ、若者は東京へ集まるのか。言うまでもありません。地方では、思うように就職ができないからです。東京で住む若者は、しかし、婚期が遅れ、東京では生まれる赤ちゃんの数が減っております。東京の特殊出生率は1.0を割りました。赤ちゃんが生まれても、そして会社が保育室を準備しても、お母さんは満員電車で赤ちゃんを抱いて通勤するわけには行きません。だからこそ地方に工場を作り、また会社を地方で興していくことが大切なのです。お母さんは、赤ちゃんをおばあちゃんに託し、安心して会社勤めができます。勤めから帰ってきても、夕食の食卓はおばあちゃんが準備してまってくれています。そこには家族の団欒も生まれます。

 若者がふるさとへ帰ってくれば、地方が活性化し、また、家族の団欒など、人生のゆとりや幸せも生まれてきます。東京と地方の格差がなくなります。

 そのためには政治が何をなすべきか。

 まずインフラ整備です。道路を作り、海港・空港を整備し、流通コストを下げる。その結果、工場の地方進出が可能となります。瀬戸大橋の通行料金を引き下げていくことは、喫緊の課題です。現在、瀬戸大橋は、観光の橋ではあっても四国の経済発展を支えるという役割は果たしては居ません。瀬戸大橋の海上部分だけを見れば、通行料金は、通常の高速道路の8〜9倍もするからです。

 同時に、地方の大学はミニ東大・ミニ京大になるのではなくて、特定の分野でその研究成果を発信できるような大学になるべきです。その研究は、産業界と連携して、その地方特有の新しい産業が起こる起爆剤となるべきです。クラスター事業を推進していかなければなりません。

 数十年前のアメリカの「シリコン・バレー革命」を、今、日本で起こそうではありませんか。

 このような発想の下で、地方財政の独立の姿を画くべきです。現状では、地方の財政は、国全体の財政再配分というレールの上しか走れません。来年度予算における措置のように、東京の法人事業税を、地方へまわすことしかできません。

 地方で働く人が増えてくれば、例えば、所得税はすべて地方税にしてもいいではありませんか。地方税にふさわしく、@応益性のあるもの、A景気に左右されないもの、B納税者と対面しながらその地方の特色に繋がるような、例えば酒税などは、地方税としてよいのではないでしょうか。

 いずれにせよ、地方交付税のような「フィクション」はもうやめにしましょう。

 目標は、陳情をストップ。東京がつくったメニューでご飯を食べるのではなくて、地方が自らの手で作るメニューでご飯を炊きましょう。

安心は日本人のDNA

 2つの大きな問題があります。

 第一は、毎年予算上社会保障費が1兆円も自然に伸びていくことです。平成20年度では、社会保障費の伸びは7500億円でした。予算上はこれを初めから2200億円カットしております。まるで成長する子供たちに、いつまでと同じサイズの靴を履かせているのが今の予算です。社会保障は悲鳴を上げております。

 今こそ、政治家が国民の皆様に説明し問いかけなければならないのは、「社会保障を充実させたいのですが、充実するとすれば税・社会保険料の国民負担は上がることになりますが、ご理解いただけないでしょうか」という点です。高度成長期には、このような問いかけは全く不要でした。公約で「税金下げます・橋かけます」と胸をはって言えたのです。今は、まさに社会保障を中心に、「大きな政府を選択するのか、小さな政府でよいのか」を政治のリーダーシップのもとに国民の皆様にご判断を仰ぐ時期にきております。もしかりに、「税金は上げません。社会保障は充実します」という政党があれば、それは選挙目当ての政策であり、そのような政党には政権担当能力がないことは言うまでもありません。私は、「大きな政府か、小さな政府か」「社会保障のレベル」を物差しとして、政界が再編成されてしかるべきと考えております。

 第二の問題は、年金制度の問題です。

 現在の年金制度が次の2点で時代にふさわしくなくなってきたのは明らかです。

 まず、日本の年金制度は世代間の助け合いという考え方にもとづいてできております。少子高齢化社会で、この「世代間の助け合い」という考え方は、美しく望ましいことではあっても、不公平という結果を生んでおります。なぜならば、年金を支える人が少なくなり、支えられる人が多くなってきているからです。私の世代では、支払い保険料の8倍近くの年金給付を受けられますが、若い人が将来受け取る年金は、支払い保険料の2倍強となります。

 次に、その人がサラリーマンなのか、自営業なのか、主婦なのか、によって年金制度の扱いが違います。例えば、主婦(3号被保険者)がアルバイトをして一定以上の収入があるとご主人の給与の配偶者控除は受けられなくなります。また、独立して保険料を払わなければならなくなります(3号被保険者が2号被保険者になる)。また、ワーク・スタイルが変わっていく中で、サラリーマンと事業者とを分けて考えることが必要なのでしょうか。この労働力不足の時代が始まっているのに、このような制度でいいのでしょうか。抜本的改革が必要です。

 私は、年金制度は、1,2,3号被保険者の区分をなくし、個人単位とすべきと考えています。

 基礎年金は、すべて税で賄う。但し、一定以上の所得のある人には給付しない。2階部分は、一定の高さまでの支払い保険料を税制上優遇し、民営化する。このようにすれば、社会保険庁などはもう必要もありません。これまで支払った保険料はどうするのだ、とのお声もあります。基礎年金の支払い保険料は、時価換算で被保険者に返す。2階部分については、新しい制度に移行する、などの知恵が出てくるのではないでしょうか。

 年金を支えてきたこれまでの考え方、自助・共助・公助の3本の柱を公助と自助の2本柱にして出直すときがきているのではないでしょうか。

日本の金融市場の国際化ー人材育成の必要性

 1990年頃のことです。ヨーロッパの金融市場を視察に参りました。EUの統合の時期にも当たりましたので、私は訪れた国で次のような質問をしました。「EUの金融市場の中心はどの国・どの市になるのでしょうか」。

 イギリスではイングランド銀行の副総裁が胸を張って断言しました。

 「もちろんロンドンです。金融取引はすべて英語ですから。」

 フランスでは、フランス銀行の幹部が分かりきったことを聞くなという顔つきで答えました。

 「パリですよ。先物取引はパリ市場が一番ですからね。」

 ドイツでは、ドイツ銀行の幹部が困ったような顔で答えました。

 「フランクフルトになると思いますよ。フランクフルトにはヨーロッパで一番高いビルがありますからね。」

 これはジョークのつもりでもあったのでしょう。しかし、いずれの国も、ヨーロッパ統合の中で、国際金融の世界で頑張っていかなければならないとの思いがあったように思います。

 振り返って、日本の市場を見ると、ニューヨーク、ロンドン、東京といわれた世界の3大市場のなかで、東京市場だけはその影が日々薄くなっていくような気がしております。東京の地位は、シンガポールや香港、上海に移りつつあるように思われます。

 不良債権処理などの内向きな問題に集中している間に、だんだん外向きの顔がなくなってきたのでしょうか。我々は、今、日本の金融市場の国際競争力を強化しくことに全力投球していかなければなりません。

 第一に、イングランド銀行副総裁が述べたように、「金融取引は英語です」。英語のできる金融マンという目標で人材を育成していかなければなりません。

 次に、国際的に見て日本の金融制度を同じようにすることです。金持ち優遇論で証券税制が論理を超えてしまうのは、見るに耐えません。

 さらに、ファイヤーウォールをどうするのか。

 国際的に同じ金融取引の土俵を作って勝負しなければ、日本の金融の将来は暗いものとなります。

 国内的に見ても、例えば家計所得に占める配当所得の割合は金利所得を遥かに超えました。配当は第2の年金といえるのではないでしょうか。

 私達日本人は、ものづくりでは世界一です。しかし、金融も、また、GDPの拡大に大きく貢献するものです。



 夢を画く、その夢を実現するためにがんばる。

 今年もご指導ご鞭撻の程、宜しくお願い申し上げます。




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