(2007年) 平成19年5月3日(木)
功亀会・大宝会 勉強会
国際社会の中で生きる
前ITU事務総局長 内海善雄 v.s. 大野功統




大野:皆さんこんばんは。本日はお集まり頂きましてありがとうございます。本日の対談のお相手は、前ITU事務総局長の内海善雄さんです。内海さんよろしくお願いします。まず初めに、ITUというのは何なのか、ご紹介いただけませんでしょうか。

ITUとは?

内海:ITUというのは皆さんにとってあまり馴染みのない名前かもしれないですが、国連などと同様の国際機関です。電報の普及に伴って設立された機関で、今ではインターネットやIP電話の仕組みの整理しているところです。世界の情報格差をなくそうとしている機関ということもできます。

大野:国際機関といえば、最近随分と日本人がトップに就任するのは難しくなりましたね。例えば先般WHO事務総長の国際選挙がありまして、日本も相当選挙運動を行いましたが、簡単に言えば最後の最後に全て持っていかれた。背景には中国の対アフリカ戦略が効いている。
内海:その通りですね。今までに国際機関のトップに就任したのは私を含めて3人。WHOの中島さん、UNESCOの松浦さんしかいない。

世界を震撼させる宇宙飛行士:外交力と情報発信力の必要性

大野:トータルの外交力が大切だということだと思います。ところで、内海さんはジュネーヴに8年間おられたわけですが、日本をどのようにご覧になっていましたか。

内海:実は欧州から見れば、日本は全く見えない。つまり情報発信力がない。逆に言えば情報収集力と分析力もない。例えば昔、北海道拓殖銀行が破綻しましたが、このときに世界では、日本発世界恐慌の噂が流れていた。本来であれば、このときに取るべき日本の行動は、そうした噂があるということを報道することと、それを打ち消す情報を国際社会に発信していかなければいけない。しかし、当時の日本では、宇宙飛行士の船外活動の報道ばかりやっていた(笑)。

大野:そこはおっしゃるとおりで、日本は自己主張をもっとはっきりすべきだ。ケンカをしなければいけない。国益のぶつかり合いなので真剣勝負をしなければいけない。なぁなぁで済ませられない問題です。私もライスさん・ラムズフェルドさんを相手に相当やりましたけど、ジョークをはさむことも大切ですね。ケンカばかりでは効率悪いですから。日本でジョークを言うと、真剣な議論をしているときに何だ、と文句を言われますが(笑)、裏を返せば本題でつめ切れていないということ。

内海:情報発信の際には、他とは異なるという「特色」を持つということも大切ですね。

日本人は考えなくなったのか:効率化社会について

大野:ところで、久しぶりに日本に帰ってこられた印象をお聞かせいただけますか。

内海:一つは、この8年間に「日本人は考えなくなった」のではないかという印象です。例えば帰国に伴って役所手続きをやるわけですが、少しマニュアルから外れることになると、もうお手上げになる。お手上げになった分、例えば延々と窓口の人と議論しなければならないなど、コストがかかる。つまり、この8年間、効率化一辺倒になりすぎて、本来の豊かさが失われてしまったのではないか、効率化効率化といって逆にコストがかかるようになってしまったのではないか、そう感じています。それからもう一つは、不況不況と騒いでいますが、全然そんなことはない。私も香川県の人間で香川県の現状をよく知っていますが、海外の地方に比べたら、美しい風景もある上に産業もまぁまぁある。つまり、良い点を何故もっと主張しないのか、情報発信力があまりにも弱い、という点です。

大野:おっしゃるとおりですね。小泉内閣の推し進めた構造改革は、効率化という点で評価できる。しかし、あまりにもマニュアル社会になってきて、逆にコストがかかっている部分がある。これから軌道修正していかなければならない問題ですね。私は先般ウォームハートという本を出版しましたが、効率化の次に求める部分を最近主張しています。それから日本は完璧主義ですね。あまりに完璧主義を押し通すと、極めて非効率な社会になります。それから情報発信力。おっしゃるとおりですね。

経済成長のために日本は何をすべきか

内海:情報力というのは、経済力に直結している。例えば携帯電話の話ですが、携帯電話の日本のメーカの国際シェアは1%にも満たない。ところが韓国のサムスンは30%くらい。これは日本が日本独自のシステムを導入したからで、サムスンは国際情勢を見てGSMという技術的には少し遅れているけれど国際標準を導入した。これが大きく響いたんですね。

大野:まさに情報力の問題。日本はモノづくりNo1ですが、情報力は車やIT技術が整備されただけでは強くならない。人間がとってくる情報が大切です。日本の車が何故売れるかというと、価値が共通しているからですね。価値が共通していればインフラも当然進んでいく。インフラ整備が進んで車が売れるようになる。しかし価値が共通していないとインフラをどう作るか勝負の分かれ道になる。その際にはやはり人間力が必要ですね。
内海:おっしゃるとおり。携帯など、日本でヒットしている高級なものが、必ずしも世界で受け入れられる訳ではないのです。また、日本のシステムを受け入れてもらうためには、政治力などのトータルの力が必要なんです。

大野:そのトータル力というのは、政府の力・外交力、そして民間との共同開発力ということですね。

情報力と語学力を含めた人間力の養成を

内海:少し観点を変えますと、やはり国際社会の中で生きるには、日本人は暗い面ばかり強調しすぎるのではないかと思います。格差社会の論議もそうだと思います。国際ケンカをやらなければいけないときに、内輪揉めをやっている。これは日本人の真面目さ、信義や礼節を重んじる心が悪く作用しているのかもしれません。これだけでは国際社会では生きていけない。言うべきことはやはりきちんと言うことが非常に大切なんです。そうした発信力を養っていかなければいけません。そして英語力。これも非常に大切になっている。日本人は英語を使わなければならない場面では躊躇する。しかし母国語じゃないので躊躇する必要はないんですよね。

大野:情報力・語学力を含めた人間力ということですね。したたかじゃないといけないということですね。最後に地元香川県について一言お願いできませんか。
内海:情報発信力ということに繋がりますが、実は私、この会場に来る前に、丸亀の中津万象園に立ち寄って参りました。お恥ずかしながら、私は香川県の人間(高松)ですが、こんな素晴らしい庭園が丸亀にあるということを知りませんでした。この由緒ある庭園を引き取られた会社の、あまり厭らしく営利目的にはしたくないという心も感銘を受けつつ感じ入った次第ですが、やはりもっともっと情報発信をしたほうがいい。それが香川県人のためにもなると思うんです。だから情報発信を日本国中に、さらに世界中にしてもらいたいな、と思います。

大野:どうも長いことありがとうございました。





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