(2006年) 平成18年12月15日(金)
証券税制のゆくえ

自民党税制調査会は、激しい議論の末、「上場株式等の配当及び譲渡益に関わる10%の軽減税率(本則は20%、利子課税と同じ)を1年間延長して廃止することを決めた。但し、廃止という言葉の裏腹に「証券市場の状況、個人投資家の株式等の保有状況等を勘案して(金融商品間の損益通算の拡大策等を検討のうえ)、成案を得て、平成21年度からの導入を目指すとする。

私の考え方は、とりあえず10%の軽減税率を延長し、その上で総合課税とする、というものであり、上記の結論には、腹に収まらないものがある。しかし、私の党税調幹部会での発言に対し、津島会長から「これから新しいよい案を作ることが大切だ」との回答があり、矛を収めた。

以下は、証券税制についての私の考え方である。

1.第一に、世界各国は、どのような証券税制をとっているのかを十分に考える必要がある。

(1)配当
@軽減税率を採用している国は、アメリカ・イギリス等である。
A課税標準を1/2にしているのが、ドイツ・フランス等である。
(2)譲渡益
@株式の保有期間が長い場合には、無税としている国もある。ドイツでは、保有期間1年超、フランスでは8年超は無税である。
A課税標準 短期保有で有税の場合でも、課税標準を1/2にしているのがドイツである。
B控除額 譲渡益から一定額の控除を行っている。イギリスでは約180万円。フランスでは約213万円となっている。
以上のように、グローバルスタンダードでは、証券に対して大きく優遇措置をとっている。その背景はなにか。

(3)優遇証券税制の背景にあるもの

@第一には、税の論理としては、配当課税は利子課税と違って二重課税となる。配当は企業の所得から経費や税金を差し引いた残りもの、余りものである。これに対して、利子は銀行にとって経費として計上済みのものである。
A更に、日本と違って外国では証券税制は優遇措置を取りながらも、最終的には総合課税扱いとなるから、金持ち優遇などの反対論は出てこない。日本も早く総合課税を考えるべきである。
B第三に、そして一番大切なことは、間接金融と直接投資と、どちらが一国の経済成長に貢献するか、という判断である。間接金融(銀行)は、リスクをとらない。芽を出した花を咲かせても、未だ貸さないかもしれない。果実が取れることが確実になると、ようやく貸し出しをしてくれる。だから、企業の経営は楽になるが、成長という視点からは、直接投資が大切である。投資は将来の夢にかけるからである。

2.安倍内閣が日本のみならず世界に出す初のメッセージが今回の証券税制の議論である。安倍内閣は、成長路線をとる。経済成長を支えるのは何か。言うまでもなく、投資である。そして、労働力の向上、イノベーションである。IT投資を10%増やせば、実質成長率は0.4%アップするとの資産すらある。その投資意欲を削ぐような証券税制の逆戻りを許してよいのか。私は、安倍内閣の成長路線に反するような日本の将来の可能性を押さえ込むような税制にしては絶対にならないと思う。まず外国の投資家について考えてみよう。

3.日本の対外投資負債

2005年末の日本の対外投資負債残高を見てみると、資産506兆円に対して負債は325兆円となっており、純資産は181兆円に及ぶ。つまり、日本は一言で言うと、おカネを外国へ持ち出しすぎているのである。日本へもっと外国のおカネがなぜ入ってこないのか。日本の金融投資市場をもっともっと魅力的なものにしていかねばならない。その中で、株式部門だけ見ると、外国人の日本株買いは、133兆円、日本人の外国株買いは48兆円となっており、差し引き85兆円、外国人の日本市場への投資残がある。この外国投資が引き上げてしまうとどうなるのか。株価低迷は容易に予想できる。さらに、ただでさえ実態に比べて安いとされる日本の株価である。外国企業が日本企業を買収してしまう可能性が高くなる。

4.現在の証券税制は、金持ち優遇か?

以上の議論を吹き飛ばしてしまったのが、利子課税20%に対する証券関係の10%が金持ち優遇であると言う議論である。果たしてそうなのか?

(1)所得階層別の株式保有状況

@現在、納税者の80%は所得税の限界税率10%以下のものである。従って、これらの納税者にとって証券税率が10%から20%となるということは、大増税を意味する。

Aそれでは、所得階層別に見て、どの層が株式保有を増やしているのか。結論から言うと、高所得層ではなく、中所得層である。2002年から2005年の伸び率でみて、第二階級(所得年間419万円)が68.8%、第三階級(同562万円)が67.9%であり、第5階級(同1214万)の18.2%をはるかに上回っている。特に株式投信は家計収入に比例して購入している傾向がある。また、平均的には、株式投信の40%は、株式で運用されている。

B特に注目すべきは、家庭の主婦層が証券市場に積極的に参加し始めていることである。女性投資家は、投機的な思惑というよりは、株主優待券や配当の魅力により、市場参加しており、証券税制が本則に戻ることは、このような女性の前向きな姿勢に水をさすものとなる。
 更に、女性の場合は、仲間意識が強く、友人や知人を証券市場に連れてきている。女性グループは、団塊の世代の夫の退職金を証券市場へ引っ張ってくる牽引車でもある。女性の関心は、利回りだ。だからこそ、税制には関心が強い。更に、できれば資産形成をしたいとの希望を持っている。
 このような女性投資家を大切にする。女性投資家の市場参加が、投資の促進による成長路線に寄与する。そして成長路線は家計にも恩恵をもたらす。政治家として考えるべきことだ。

C最後に国民の皆様に是非ご理解をいただきたいのは、証券税制を本則の20%に戻しても、金持ち優遇是正にはならないということである。所得税の最高税率は40%であるが、仮に証券税制を20%に戻しても、格差は30%から20%となるだけである。それのみならず、繰り返しになるが@納税者の80%は所得税限界税率10%のものである。A株式保有者の70%は高齢者である。B女性の証券市場への関心が高まってきた。C株式保有を増やしているのは、所得の中堅層である。これらを考えれば、本則20%に戻すことが果たして大多数の国民の意を汲むものであろうか。

真に公平な証券税制を構築するためには、欧米のように、理論的には「二重課税」の問題、政策的には「投資の促進」、この二つの面から、利子課税に比して、配当の課税標準を少なくとも1/2以下、譲渡益についても保有期間一定以上のものは非課税、さらに一定の所得控除を行ったうえで総合課税とすべきである。

新しい証券税制を考える上で、以上のようなことを十分検討していくべきと思う。

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