(2006年) 平成18年10月27日(金)
防衛庁の省昇格

1.本日(10月27日)、防衛庁の省昇格を決める法案が国会に提出された。待ちに待った法案であるから、感慨深いものがある。

2.私自身、防衛庁長官に就任して(平成16年9月)、直ちに「省昇格」のプロモータとなった。直ちに友党、公明党の冬柴幹事長と会い、「省昇格法案」を国会へ提出したい旨、申し入れた。
 同幹事長は、「考え方は理解できるが、現在防衛関係の問題が山積している。一年間待ってほしい」とのことであった。事実、私の長官時代は、@10年に1回の防衛大綱の見直し、Aイラクへの自衛隊派遣をどうするのか、B米軍再編成をいかに解決するか、これまでになかったような大きな節目を迎えていた。そこで、1年待って確実な「省昇格」を期待し、私は了承した。

ところが、1年経過して、いよいよ「昇格」となった時、防衛施設庁の談合事件が発覚し、「省昇格」は見送られそうな気配となった。が、民主党某議員のガセネタメールで、これがうやむやになり、更に安倍内閣発足で心機一転の中で、再度「昇格」のチャンスが出てきたのである。

 この機会を絶対逃してはならない。法案を成立させるに当たって、次のことは特に留意すべきである。

第一に、防衛問題は、国家の基本問題である。黒澤明監督の名作「七人の侍」を思い起こしていただきたい。村人は、自分が食べるものも食べずに、それでいて村を守るため浪人を雇った。国の守りは国民にとって基本問題である。だからこそ、「省昇格」問題を政争の具にしてはならない。国の安全保障という見地から、与野党が真剣に議論しなければならない。

第二は、外交と防衛は、安全保障にとっては一枚のコインの裏表の存在であることを強く認識すべきである。防衛庁は「庁」という特定の実務を実行する機関という位置づけであるため、安全保障のための表裏一体の存在と言うよりも、単なる実務を実行する存在と誤解されてしまっている。

イラクへの自衛隊派遣を考えてもらいたい。これは、実力の行使(武力行使)をしないのであるから、自衛隊が必ずやらなければならない仕事ではない。生活環境が極めて厳しい場所で人道復興支援活動に従事するために、自己完結型で仕事ができる自衛隊に委ねられているのだ。自衛隊のイラク・サマワでの活動は、まさに外交である。日本国全体としての世界に発出する平和のメッセージである。防衛と外交は一体との観点は、決して忘れてはならない。

第三に、「昇格」は国民にとって、国家にとって、いかなる意味を持つのか、基本的な認識を明確に持ち、かつ、国民へメッセージを発出していかねばならない。

@閣議での発議権を、防衛官庁が自ら持つメリットがある、との政府の説明であるが、なぜ自ら発議権を持たねばならないのか、十分な説明が必要である。

Aそれよりも、本質的な問題は、国と国民の安全と安心を守るため、一定の範囲の下では、いち早く行動できるようにすることである。防衛庁長官時代に、中国の原子力潜水艦が、日本の領海を侵犯したことがある。私が報告を受けたのは午前6時過ぎであったが、実際に命令が出たのは午前9時前であった。何故か。自衛隊法82条によれば、総理大臣の承認が必要であるからだ。つまり、内閣との意見調整に時間を取ってしまったのだ。同84条の領空侵犯については、防衛庁長官独自の判断で対処できる。

B従って、省昇格に際して、(1)防衛大臣独自でできる仕事、(2)安全保障会議の議を経て内閣として決めること、(3)国会で承認を必要とすべきことを明確に仕分けをすることが必要であろう。言い換えれば、「昇格」は、シビリアンコントロールの必要性、重要性を再認識することが必要である。

以上を総合的に考えれば、今、もっとも必要なことは、前述した@外交と防衛はコインの表裏(例えば国際平和協力活動を自衛隊の本来任務とすべきは当然)、A国民に安全と安心をいち早くお届けすると言う意味、の2つの問題を含め、今、総合的な日本の安全保障の考え方を世界に送る法律(メッセージ)が必要である。

安全保障基本法を早急に作ることを提案する。

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