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(2006年) 平成18年9月11日(月) |
格差社会に どう向き合っていくか |
日本の社会でも所得格差が問題となってきた。事実、 例えば、生活保護世帯は1995年には、日本全体で60万世帯であったものが、10年後の2005年には105万世帯となっている。貧困率(所得中央値の半分以下の所得の者の全体に対する割合)は、15%と世界の先進国に比して高いほうだ。 所得格差が生じてきた原因はなにか。まず小泉構造改革との関係である。構造改革の1つの側面は、規制緩和である。そして規制緩和は新しく仕事を増やす。例えば派遣社員の数が増えてきた。問題は、派遣社員の給与が正規社員と較べてどの程度低いかということである。このことは、正規社員と非正規社員との間の給与格差と同じ類の問題であり、構造改革によって直接惹起される問題ではない。さらに構造改革とは、透明な競争社会を作ることである。競争社会では、勝者と敗者が生まれる。小泉構造改革によって格差が生じているのか、これはまだ実証することはかなり難しい問題である。 それでは今なぜ格差が社会に浸透してきたのか。 @不況・・・まず低迷する景気によって失業者、或いは低賃金でも働く人が増えてきたことである。しかし、現在の統計では、失業率も4.1%に改善し、有効求人倍率も求人が求職を上回ってきた。 A高齢者の増加・・・特に単身高齢者が増えてきたことは問題である。単身高齢者には、年金だけが頼りの人が多いのではないか。 B若年者の二極化・・・例えば、フリータと呼ばれる若者が増えてきたことも所得格差の拡大に繋がっている。 Cパートタイマーの増加・・・現在労働力の約3割がパートタイム労働である。正規雇用とパートタイム労働者の賃金の格差は大きい。正規雇用の場合は、生活給と考えられるのに対し、パートの場合には単に市場賃金が参考にされて時間給或いは日当が支払われて、低くても当然という雰囲気があるからである。 D母子家庭・・・以上のほか、母子家庭の現状についても十分配慮しなければならない。 以上のように分析してみると、格差社会の原因は、(1)景気動向、(2)ライフスタイルの変化、(3)雇用形態などだと考えられる。ここでは、景気動向の問題は別として、ライフスタイルと雇用形態について考えてみたい。 ライフスタイルの変化に対応 高齢化社会の中で@単身高齢者が増える、A高齢者の中でも退職するもの、働き続けるもの、B資産所得があるもの、ない者がある。対策としては、例えばフランスのN分N乗方式の所得税を日本に導入(但し祖父母の数も家族数に加える。これは、フランスの制度にはない)することを真剣に検討する。高齢者の働く場所を創設する(定年退職年齢の引き上げ)。元気なお年寄りが半ばボランティアとして介護施設や幼稚園で働くことを検討する。相続の場合、同居して親の世話をしたものには、法定相続分を増やす。同居していない場合は、相続税を高く設定するなども検討の対象となろう。 ワークスタイルの変化に対応 正規雇用と非正規雇用の間に時間当たりの賃金格差が大きいことから、最低賃金制度の見直しが絶対に必要である。さらに、極めて重要なことであるが、社会保険料は、正規労働者であろうとパートタイマーであろうと、また15歳の少年がアルバイトをしようと高齢者が働こうと全て納入するシステムにすべきである。コンピュータ時代であるから、一人一人の社会保険料を管理することができる。このようなシステムにすれば、企業側も正規・非正規の雇用をコスト面から区分けして考える必要はなくなる。パートタイマーを安く使用するという意図もなくなっていくと思う。この場合の企業側の負担については、言うまでもないが、年金等社会保険制度全体の中で考えて、企業側の負担を極力抑えるようにしていくべきは当然である。N分N乗方式を採用すれば、家族の一人が年間約130万円の所得以上には働かない、働きたくない、という労働力不足時代のばかげた現象もなくなると信じる。 所得階層の流動化をはかる 最後に格差解消問題とは別に、一人の人間が同じ所得階層に留まるのではなく、所得階層の階段を上っていけるような仕組みを政治としてはつくりあげておく必要がある。なぜなら、@結果の不平等が機会の不平等を招く、A能力開発の機会が平等でない、B現在の税・社会保障制度には所得再配分機能がなくなりつつある、からである。 結果の不平等が機会の不平等となっている典型的な例は、学校教育である。現在の教育にカネがかかりすぎている。従ってカネがなければ優秀な大学へ入れない。良い就職口もない。是非とも昔のように貧乏でも子供や田舎の子供でも夢と希望を持って将来にチャレンジできる制度を作る必要がある。例えば現在の奨学金制度は貸付制である。しかし、優秀な子供には、給付制度にすべきである。外国の例で見ても明らかである。また大学入試のテストは、受験者の知識を試すのではなく、能力を試すものとすべきである。 第二に能力開発はあまりにも企業に頼りすぎていないか。誰でデモおーぷン名公共の能力解発のシステムをつくろうではないか。また能力開発のシステムは、本人が持っている技能を高めるだけではなく、未知の世界へも飛び立てるような翼をもたせるものとしなければならない。 第三に税や社会保障制度が所得再配分機能を失いつつある点である。所得税の場合、現在は課税最低限が極めて高く、累進度が弱くなっている。その上、総合課税ではないから、所得再配分機能が弱くなっているのは当然である。社会保障制度は、負担は上がり給付は下がってきているのが現状である。水平的な所得再配分はあっても、弱者や敗者に対する垂直的なセーフティネットとはなっていない。所得格差が問題となり始めて、更に構造改革のあと本格的に勝者と敗者・強者と弱者の問題が出てきたときには、単にセーフティーネットとして奈落の底に落ちるのを防ぐだけではなく、トランポリンのように、おちても跳ね上がってくるくらいの力強いものが必要となってくる。このようなシステムは、財政支出にしか求められないのではないか。 政治が、以上のような問題に真剣に取り組んでいかない限り、折角推し進めてきた。そしてこれからも推進していかねばならない構造改革は悪夢になってしまう。このままでは、日本の将来はマクドナルドで安いハンバーガーをぱくついているか、それとも高級レストランでワインを楽しんでいるかのアメリカ社会と二重写しに見えてしまう。しかも、その所得の二重構造は、日本の場合固定化してしまう恐れが大きいのだ。 |
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